ニッポン2025

 

AI進化、ヒト並み知能の「AGI」登場 判断や意思決定も

 

 

2025年を迎え、21世紀も四半世紀が過ぎようとしている。技術進化は速まり、世界の政治・経済情勢も激変した。50年に向けた25年の現在地を6つのテーマで探る。注目の一つが人工知能(AI)だ。今年は幅広い領域で人間並みの知能を持つ「汎用人工知能(AGI)」の出現が予測される。テック大手はAIが全人類の知性を超える「シンギュラリティー(技術的特異点)」の到来も見据える。

AI開発の最前線にいる米テック業界からはAGIについて実現が間近との声が相次ぐ。

X(旧ツイッター)やスペースXを運営する起業家のイーロン・マスク氏は、AGIの到来時期を23年7月時点では「29年」としていたが、24年4月のイベントで「25年末か26年以内」と予測を4年前倒しした。オープンAIのサム・アルトマン最高経営責任者(CEO)も24年11月のオンラインイベントで、25年のAIの変化を問われ「AGIだ」と述べた。

日本からはソフトバンクグループの孫正義会長兼社長も24年10月にAGIの登場時期を「2?3年後」と予測した。23年10月のイベントでは「今後10年以内」と語っており、前倒しした形だ。さらに人間の1万倍の知性を持つ人工超知能(ASI)が35年までに到来すると大胆な見通しを示している。

近年注目を集める生成AIは人間のような作業をこなせるが、主な用途が絞られていることが多い。

オープンAIの「Chat(チャット)GPT」は人間の指示に従い検索した情報を整理して文書で示す。生成AIを使う米マイクロソフトのデザインツール「デザイナー」は任意の構図や背景、画風の画像を生成できる。米グーグルの「アルファフォールド」はたんぱく質の立体構造を予測する。

AGIは幅広いスキルで人間に匹敵しうるのが特徴だ。AIがAGIのような高い知性を獲得すれば、人間との関係性も変わると見込まれている。単なるツールではなく、一定の意思決定や判断を任せられる存在となる。

こうした使い方は「AIエージェント(代理人)」と呼ばれる。例えば企業の営業部門の会議の様子を把握したAIが具体的な指示がなくても必要な資料や出張の旅程表を作成する。

グーグルやマイクロソフト、米アンソロピックなどがこうしたエージェント機能を徐々に実装しつつあり、オープンAIも早ければ25年初めにもAIエージェントのツールを公開するとされる。

AIが全ての領域で完全に人知を超すシンギュラリティーの実現はまだ先とみられるが、到達時期の予測は前倒しされている。発明家のレイ・カーツワイル氏は05年に公開した著書で、45年に到来すると言及し注目された。12年にはオックスフォード大のスチュアート・アームストロング博士が「2040年」と言及。神戸大の松田卓也名誉教授らは「30年ごろ」とみる。

今の生成AIはもっともらしく誤って解答するハルシネーション(幻覚)や学習データが偏っていると差別的な判断をしかねないといった問題も抱える。人に代わって判断を担うにはこうした課題を解決する必要がある。

「AI」という用語は1956年に米ダートマス大学で開かれた研究会で、ジョン・マッカーシー博士が名付けた。そこで初めてAIプログラムが実演され、同年はAIが産声を上げた年といえる。

何度かブームを経て実現のメドがたったのは、2000年代からの第3次ブーム以降だ。人間の脳を模した情報処理技術「ディープラーニング」や、膨大な情報の塊「ビッグデータ」が実現し性能が飛躍的に向上した。

各社は高機能モデルの投入を加速している。24年12月にはオープンAIが論理的思考力を高めた「o3(オースリー)」を発表。グーグルも「エージェント時代に向けた新しいAIモデル」とする「Gemini(ジェミニ)2.0」の提供を始めた。

「三度目の正直」で急激に進化し、人間に並びつつあるAI。69年目を迎えた両者の関係性は、今年が大きな節目となりそうだ。

AGI Artificial General Intelligence(人工汎用知能)の略で、人間のような汎用的な知能を持つAIを指す。従来のAIは画像や音声などのタスク別、数学やチェスの対戦など領域別では人間を超える実績を示しつつある。AGIは幅広い領域で複数のタスクについて判断し処理できる力を持つ。

人間が下していた意思決定の一部を担うのが特徴だ。例えば「社内の顧客データを収集・解析し、見込み客を見極めてリストアップし、商談のメールを送る」といったビジネス活動を、人間が逐一指示を出さずとも自ら判断して実施する。

さらに相手の反応を学習して商談の成否の見極めや文面の精度を高めるといった、自律的な学習も可能とされる。AGIが到来し人間の同僚やパートナーのような存在となれば、生産性の向上や人手不足の解消にAIが大きな役割を果たすようになる。

 

慎泰俊
五常・アンド・カンパニー株式会社 代表取締役
分析・考察  私は基礎的なNNのアルゴリズムを書ける程度の知識しか持ち合わせていないですが、あくまで一般論としては、物事が目覚ましい進歩を遂げているタイミングでは人々の予想は楽観的なものになりがちであり、楽観予測を立てる人々は往々にしてそれによって利益を得る場合が多いです。ハイプ期にある現在における未来予測は割り引いて考えるのが正解だと思います。学者の中にも、Andrew Ngのように、AGIすらまだまだ先の話である(技術的に乗り越えるべき課題は多い)という人々は多いです。

一方で現時点でもAIによって作業効率は格段に上がっており、ホワイトカラーの仕事が劇的に減るのは避けようが無さそうに思います。

 

 

もどる